乱暴な言葉を使うので不安・・・
【中高生になって乱暴な言葉を使い不安】について
大阪教育大学健康安全教育系教育学部教員養成課程家政教育部門 教授
小崎 恭弘 先生 からのアドバイス
小さいうちから乱暴な言葉を使っていると、思春期になった子どもはもっと言葉が乱暴になってしまうのではと不安に感じる方もいるかもしれません。しかし小崎先生によれば、中高生で言葉が乱暴になる反抗期は幼児期の悪い言葉遣いとは大きく意味が異なるのだそうです。
「幼児期はあらゆる言葉を吸収する時期で、その一環で『悪い言葉』を使うようになりました。しかし中高生になって反抗期を迎えて乱暴な言葉を使うようになったら、それは子どもが自立しようとする現れといえます」(小崎先生)
子どもたちは成長し、守られていた家庭を出て、厳しい世界を生きていかなければなりません。そんな将来を生きていく子どもたちにとっては、思春期に現れる乱暴な言葉遣いも必要なステップだといいます。
「思春期はすべての子どもに訪れますが、反抗期が強い子もいれば弱い子もいます。乱暴な言葉遣いに圧倒される保護者さまは少なくありませんが、反抗期にそうした態度が現れるのは悪いことではありません。子どもが社会の中で生きていく力を身につけるために不可欠な、大きな変化のタイミングが訪れているのですから。反抗期の態度の変化を親子で悩み葛藤したという経験は、未来の子どもの人生を必ず豊かなものにしてくれますよ」(小崎先生)
ただ、乱暴な言葉遣いをしていると、子どもがトラブルに巻き込まれるケースもあります。親の介入が必要なタイミングを見逃さず積極的に手を差し伸べるためにも、親の注意と関心がとても重要といえます。
「中高生の子が親にとって好ましくない言葉遣いをしたからといって、小さい時のように子にぴったり張り付いて一つひとつ『この言葉はいい・悪い』を教えるなんてできませんし、する必要もありません。乱暴な言葉の表面的な意味だけに着目して、頭ごなしに叱りつけることも望ましくありません。では一体どうすればよいのか。一番大切なのは、親が子どもの変化を受け止めることです。まずは言葉遣いの荒れたお子さんを細やかに見守って、気持ちに寄り添ってあげてください。そして乱暴な言葉遣いに対しては、それを聞いた人が感じること、『言葉で自分の気持ちを伝える』とはどういうことなのかを、ぜひ保護者さま自身の言葉で伝えてあげてください」(小崎先生)
乱暴な言葉をどう感じたのかを伝えることで、子ども自身に気づきを促します。また、親の問いかけによって、何かを伝えるために荒れた言葉を使う必要が本当にあったのかと子ども自身が考える機会を得ることになります。こうしたコミュニケーションは、子どもが心に多様性や多重性を身につけ、成熟した大人になるための成長過程なのだと、小崎先生はいいます。
「そして同時に、親自身も自分の子どもの頃をもう一度振り返ってみましょう。ご自分だって、親からいろんなことを教えてもらいながらここまで育ってきたのではありませんか?自分自身が子どもの立場で体験してきた子育ての延長線上に、今の親としての子育てがあるのだと気づいたとき、子どもを見守る視点はぐんと広がります。子どもだった頃の記憶や経験と重ねてわが子をよく観察していれば、子どもが親の手助けを必要としているタイミングが自然と分かるようになっていきます」(小崎先生)
子どもの言葉遣いについて親子でしっかりと意見を交わして一緒に考えることは、新しい価値観や考え方を子どもの中に取り入れる大切なタイミングです。乱暴な言葉の意味合いだけに囚われているばかりでは、せっかくやってきたこのすばらしい成長のチャンスを見逃してしまうかもしれません。
「子どもが悪い言葉を使ったとき、貴重な変化のタイミングを歓迎する気持ちで前向きに取り組んでみてほしい」と小崎先生はいいます。